哀しみの瞳
あれから、秀一のところへ、美佐子から、連絡があり、由理が何とか立ち直り元気にしていると、知らせが、来てからというもの、秀一は複雑な気持ちに揺れていた。あの夜の、自分の気持ちに、何故か今までとは、違う由理への、感情が沸いて来ている事に、うっすら気付き始めていた。



小さい頃から、泣き虫な由理…いつもいつも自分のあとを付いて来る由理…最後は必ず俺の言う事を訊く由理……すべてが、可愛くて仕方がなかった。



それも、どれも、すべてが、兄として、守ってやりたい一心だった。



あの夜までは、自分では、そう思い込んでいた。



そう思い込もうと無理をしてきたのかもしれない。



だが……あの夜…自分の本心に…………気付いてしまった。



自分は、兄としてでなく、男として、由理を守ってやりたいと願っていた。



それだけでなく、誰にも、渡したくない、とまで内心思っていた。



由理は、自分のものじゃないって、否定すればする程、由理を離したくはなかった。



何時からなのか?自分でも、判らない。



毎日、そのことを考えながら眠りに就く日が続いた。


由理の元気になった姿を一目見たい気持ちと、自分の気付いてしまった、男としての想いが、交差してしまい、帰る事が出来ずにいた。由理の声を聞くことすら、出来なかった。


ただ、今は、由理が、真の家族として、秀達と共に元気に暮らしている事をまずは、良かったと思うようにしていた。



しかし、どれだけ、美佐子から、帰って来るように誘われても、帰る勇気が、沸いてこない秀一であった。
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