哀しみの瞳
何ら不満の無い豊かな生活の中で、由理の感情は、少しづつ、失われていった。



季節は流れ……月日は、あっという間に過ぎて行き…


由理は、大学生になっていた。


希望通りの体育大学へ進学し、傍から見ると、この上ない、しあわせな親子として、近所の人達からは、羨まれることが多かった。


高橋もみち子も、それは、毎日のように、楽しそうに暮らしていた。


由理を大切に大切に思ってくれていることは、誰よりも、由理は理解していた。


けれど、心の中は、荒んで行く一方で、由理にはどうする事も出来ずにいた。


両親の前では、本当の子供として、良い娘を装うように心掛けていた。そうすることで、この時間を乗り越えられるのであれば、そうするしかないと思ってた。
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