哀しみの瞳
病院の前に着いた時、秀は涙ぐみながら、言った。



「由理は、言葉を発しなくなってからは、毎日、毎日病院内の図書室のような、本が沢山ある部屋で、ずっと、ずっと本を読んでいたそうだ。誰が声を掛けてもきかずに、本を読み続けていたそうだ!秀一?お前にはどうしてか、分かるだろ?何で本を読み続けたのかを。理由を知ってるよな!」



走りだしながら…


「部屋の番号は?」



「3502号室…」


秀の目からは、涙がこぼれ落ちていた。



我が子である秀一が、そして由理が、こうまでならないと、しあわせにたどり着けないものなのか!自分のこと以上に辛くて仕方がなかった。


どうか二人が素直な気持ちになって自分達の想いに気付いてくれるようにと願わずにはいられなかった。



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