哀しみの瞳
由理は、柵にもたれながら、空を見上げていた。



秀一は、ゆっくりと由理に近付いて行った。



(秀一)
「由理??……由理!俺だよ!分かるよね?」



由理の身体が一瞬硬くなるのが判った。


(秀一)
「由理!…(由理を自分の方に向かせる)由理!久し振りだよな?…何でこんなとこに居る?………どうした?」



由理の目からは、涙が溢れて止まらない。が、声は、一向に出てこない。



(秀一)
「どうした?…あんまり久し振り過ぎて、何にも、言う事ないのか?んんっ?」


身体を引き寄せ、そっと抱き締める。


と…由理は、両手で思い切り秀一を突き放した。



(秀一)
「どうした由理?俺の事、怒ってるのか?そうなのか?……お前に会いに来なかったから。そっか!怒ってるんだよな?やっぱり。………許してはくれないのか?何とか言ってくれよ!由理!!!」


由理は、頭を抱えて首を横に振る。少し言葉を吐こうとするが、くるしそうな表情をしながら、膝間付いてしまう。



(秀一)
「そっか!俺にも、何も言えないくらいなんだな?じゃあ、俺は、また行っちゃうぞ!もうっ、此処へは来ないからな!良いんだな?由理は、何時まででも、そうやってろ!!」


秀一は、後ろを向いてゆっくりと歩いてドアに向かって行った。
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