哀しみの瞳
理恵~10才~いじめ
理恵の大嫌いな夏がまたやってきた。理恵は10才になっていた。あれからの理恵は本当大変だった。僕にはなかなか自分から話そうとはせず事あるごとに泣き虫でそうかと思えば僕が行けない日は一晩中泣いておばさんを困らせたり~そんな理恵が今では「秀…帽子被ったから、もう準備できたよ、ピアノ教室行くんだよ!行こう!」理恵のピアノの日は何故か僕が送り迎えをする事になってしまい、理恵はこの時だけは本当楽しそうだった。きっと唯一僕に勝てるからだと思うけど、僕はピアノを弾けない。「秀ちゃんいつもごめんねぇ、秀ちゃん高校受験ゼミ受けてるのに、理恵に付き合わせちゃって」「ああーん、あれね、あれは母さんを安心させる為に行ってるだけですから、行っても行かなくても別に構わないんですけど」「秀ちゃんだって県内一番の進学校を受けるんでしょう!すごいわ!どうしたら秀ちゃんみたいな子になれるのかしら?理恵は逆立ちしても成れないわ。あはははっ」おばさんは本当率直で明るい。僕は嫌いじゃない。「秀ぇ-早くぅ行っちゃうよ!」ダッダッ!「待てっこらぁーまた転んじゃうぞ!!」「じゃぁおばさん行って来ます」理恵は運転オンチで何もない所でもすぐに転ぶ。そして怪我をするとなかなか治らない。身体は小さい頃から変わらず細い。色白な顔は一段と磨きがかかり透明に近い。正面きって見れない時がある。 そんなある日の事、事件は起きた。たまたま僕が塾の帰りに寄った時、理恵が頬を隠すように部屋からでてきた。理恵の顔を見たとたんに僕は叫んでしまった。「理恵…その顔はいったいどうしたんだ?」一瞬理恵が怯んだ。目からは涙がポロポロとこぼれてきていた。「ああっごめんよ、驚かせてしまって、けどその頬のあざはどうしたんだ?ええっ?ゆっくりでいいから、正直に言って」奥からおばさんがやってきて「秀ちゃん、私達が何を聞いても言ってくれないのよ。どうせ転んでどこかにぶつけたんじゃぁないのって主人と話してたところなのよ」「おばさん、ここは僕が聞いてみますから、二人にしてください」