哀しみの瞳
そこへ、一人の女子学生が、理恵に近付いてきた。


「どうしたのかな?」


「はい!知り合いを探しています。でも、まるっきり知らずに来たので、何処をどう行けば会えるのか、分からなくなってしまって……」

「法学部なの?」

「はい!」


「そうー、ちなみに、分からないかもしれないけど、名前聞いても、いいかしら?」


「……」


「名前を聞かないと、探せないわ!」


「吉川…吉川 ひで、って言います。」


「ええっ?吉川 秀っ?」


「ご存じですか?」


礼子は、何故か直感めいた物を感じた。


「えええっ、…ちよっと…」

礼子は、とっさに思った。(この時間は、まだまだ秀は、学内にいるはず。この子は、まさか?
まだまだ子供みたく見えるから、何やかや話を聞き出してみるのも、いいかもね。秀の私の知らない秘密が少しでも分かるかもしれない)



「貴女、名前は?」

「吉川 理恵といいます」

「ええっ、吉川?じゃぁ、吉川君のぉ?」

「従兄弟にあたります」

「ああーん、従兄弟ねぇ、ふぅーん」



「でっ?何しに、大学まで、訪ねて来たわけ?」

「……」


「えっ、理由もなく、こんな所へ1人で来たのぉ?」
(やっぱり、何か訳ありね。)

「……」

「でぇっ?このあと、どうするつもり?このままじゃぁ会えるかどうか分からないわよ!こんな広い学内じゃぁ」

(私は、何処にいるか、知っている、そして、いつ帰るかも…)



理恵は、この人は何てキツい言い方をする人なんだろうか、と、思っていた。


「一応、アパートの住所も聞いているから、そこで待とうかと」


「へぇぇぇっ、アパートまで、知ってるの?」

「じゃ、じゃぁ、私がそこまで一緒に行ってあげるから、貴女一人じゃぁ危ないわ!住所書いてあるメモ、見せて?」
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