哀しみの瞳
理恵は礼子と待って、話している間、礼子が失礼な質問を繰り返し中、感じとっていた。

この人は秀に好意を持っているのでは?と…


理恵は、電車の中で、手紙を用意していた。万が一会えなかった時の為に。 さっきアパートの前まで行った時、礼子に分からないように、コッソリとその手紙をドアの隙間から入れておいた。それが出来てた事だけでも、今はただ、ほっとしていた。


帰りの電車の中で、理恵は人目もはばからず泣いた。

(ひでっ…会いたかったよ!)



礼子は、素早く駅より戻り、秀を待った。程なく、秀が帰って来た。アパートの前にいる礼子に驚き。


「何でぇ、君が、此所にいる?って、どうして、俺のアパート知ってる?」


「あらっ、簡単よ!学部別の学生簿を見させてもらってアパートの住所分かったのよ!」

「だからっ、何の為に此所に居るんだ!」


「どうしても、吉川君と話がしたかったのよ!」


「だからって、アパートで待ち伏せするのか?」


「だって大学では、何にも話してくれないからよ!」


「君と話す事は何もないから!帰ってくれ!」秀はドアを開けて、振り向きもせずに中に入っていった。


礼子は、ますます、秀という男を知りたいと思った。容姿端麗、頭脳明晰、非の打ち所の無い私を、まるで相手にしない、この男に興味を抱かずにはいられなかった。
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