哀しみの瞳
(沙矢)「どうして秀さんはそんなに優しくて挙げ句に頭いいんですかね?」武が話を割って入ってくる。「俺、秀の数少ない友達の武と言いますけど」「はいっ、私、理恵の友達で沙矢と言います。よろしく」沙矢は人懐っこく、笑いかけた。この気の荒そうな武にきちんと挨拶できる沙矢は肝っ玉が大きいと思った。沙矢はえらく武が気にいったらしく今度4人で何処か遊園地でも行こうとさかんに誘っていた。そういう武は理恵にさかんに図書館へ行って本を読もうとか、訳の分からない誘いをしていた。まぁ、武は、理恵が暑いところが苦手なことを知っていたからで僕は3人の会話を聞かない振りをしながら理恵の反応だけは見ていた。まぁ、こんな事がたびたびあり、結局僕らは4人で図書館へ行く事が日課になっていった。 僕と武も高校3年になり大学受験に向けて図書館で二人で勉強してたある日。沙矢が理恵の肩を抱いてそろそろ入って来た。立ち止まり、僕達二人に気付いた。理恵は半分泣いているようだった。僕は図書館である事を忘れてしまい、大声で叫んでしまった。「理恵、どうした?」武が気をきかしてくれ、全員外へ出してくれた。「理恵、どうしたんだ?沙矢ちゃん、理恵に何かあったのか?」「私にも、何も言わないの、学校帰る時から様子がおかしくて。一言も話してくれなくて。それでここに来れば秀さんいると思って、連れて来たんです」僕は理恵を昔みたいに黙って抱き締めてやる。「秀、俺たちに今出来る事は?何?」「ああっ、悪いな!ちよっと二人にしてくれるかな!」「じゃぁ、俺たち図書館の中に入っているからいつでも呼べよ!じゃ沙矢ちゃん、行こう!」「うーん…」心配そうに武の後に沙矢はついて行った。