哀しみの瞳
秀は、次郎おじさんの家にすぐに電話を掛けた。



待子が出た。

「もしもし!秀ですが、おばさん?いきなりですけど、理恵の合格の事、聞かれましたよね?」



「ええっ、まぁ。そのことは、秀ちゃん。あのぅ…」


「理恵は?今そこに理恵は居ますか?変わってください」


「秀ちゃん、理恵の事なんだけど、あのぅ、それがね…」


「ああっ、まずい!電話かかってきた…おばさん、もう切ります。来週そちらに伺いますから、理恵の合格祝いは、その時で。理恵によろしく言ってやってください…」


「秀ちゃん、ああっ、ちよっと…」もう切れていた。


(待子)
…どう秀ちゃんに言えばいいのか。待子は、子供の頃からの二人をずっと見てきた為、二人が惹かれあっていることは、薄々勘づいていた。けど、二人がどうしようもないことも、自分なりにも、分かっている。前の夫は、それはそれは、どうしようもない、悪な男であった。そんな父親の娘である理恵を、あの義兄夫婦が、秀の相手として考える訳もなく、世界の違いは、もともと感じていた。でも、秀ちゃんが理恵のことを心から、想ってくれているのは、正直、嬉しくもあった。だけど、今となっては、二人は絶対に結ばれない。ここは、何としてでも、秀ちゃんを、説得しなければ、っと待子は思った。
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