哀しみの瞳

（待子）
「秀ちゃん！ごめんなさい。私が悪いの。決まってた話を、理恵にも、貴方にも、内緒にしてて。いえっ、理恵には、大学受験する前にようやく、話したの。熊本の事。もう私と主人と、熊本のみち子姉さん達とで決まってた話なの…」


（秀）
「ええっ、決まってたって！それよりか、受験するって前にですか？」

（待子） 「……」


（秀）
「そもそも何で、理恵が、その熊本へ、行かなくてはいけないんですか！」


（待子）
「…内の姉のところは、子供がいなくて……それで理恵を跡取りとして育てたいって話があって。
主人と相談して…それは、ちょうどいい話じゃないかと思って、決めたのよ」


（秀）
「理恵には、何も相談せずにですか？勿論俺にもですよねぇ」



（秀……
だからといって、何で、その事を受験前に話すんだ！
だとしたら、理恵は一体、どんな気持ちで、受験しに行ったんだ？）


（秀）
「それで、それで理恵の返事は？どうだったんですか？…そのぅ、おばさんが熊本の話をした時の返事は？」


（待子）
「うんっ、分かったって、私の言う通りにするって」


（秀…
理恵！何で？何でそんなに簡単に大人の言う通りになんか……君は、その時どう思ったんだ！どれだけ、辛くて、悲しかっただろうに。）