哀しみの瞳
理恵が一人で帰ろうとした時、図書館より武と沙矢が出てきた。「理恵ちゃん、一人で帰すのか?」「いやっ!」「俺が家まで送るからお前は沙矢ちゃんを頼む!」僕は剛というやつが理恵に告白したことを聞き頭の中が混乱していた。整理できずにいた。今まで封印していた感情が爆発しそうだった。それからしばらくは何事も無かったように過ごした。そんなある日武が進路の相談がしたいと家にやってきた。「相変わらず、勉強せずに何やってんだぁ?」「家に帰ってまで勉強したくないよ。本は好きだから」本気で本を読んでいたわけではない。理恵の事ばかりを考えていたのだから。「お前やっぱり、法学部受けるのか?」「ああっ、東京に行く事になるけど」「ふむむむっ、そっかー、じゃぁ俺はやっぱり、地元の大学行くわ!通い楽だし、教育学部。まぁ中学の先生にはなれるかなぁ!へへへ」「なんで俺に相談するんだよ。勝手に決めろよ!」「何言っちゃってるんだよ!俺はお前の為にだ…その、現実には東京へ行きたいところだがぁ、お前が東京行っちゃうと理恵ちゃんが寂しいだろうから、代わりに理恵を守ってあげようかと、考えた訳だ。なんて俺は優しいんだ」「俺はそんなこと、お前に頼んでないだろう」「お前のそこんとこが悪いところだ。何でも自分で抱え込もうとする。いかにお前が天才でもなんでも、出来る事と出来ない事があるんだぞ!心配するな、任せておけよ!」「何でも勝手に決めてしまうんだな、お前は後悔しないのか?」「お前にはこれ位にしないと、通用しないからな、じゃぁ、そういうことで、お互い頑張ろうな!」「ええっ、それで終わり?」「終わり!うだうだしないのが俺のモットー」しかし後々武にも随分つらい思いをさせることになるとは、この時僕にも分かっていなかった。