哀しみの瞳
台所の片付けを、終わらせると、重子は、自分と理恵の分のお茶を入れてくれた。



(重子)
「何か色々、訳ありみたいだけど、私に話しを聞かせてもらえるかい?
それと、昨日から、気になってたんだけど、少し顔色悪いけど、大丈夫かい?」



(理恵)
「……知らないお家に、いきなり上がり込んで来てしまって…本当にすみません!本田君にも、一つ返事で、私を此処まで、連れて来てくれて、申し訳なく思ってます。
何から話せば良いのか………」



重子は、神妙な、面持ちで、理恵の話しを黙って聞いてくれた。重子の人柄のせいなのか?理恵は、こんなにも、すらすらと、自分の生い立ちから、家庭の事やらを、知らない人に話すのは、初めてとは思えない程話す事が出来た。
勿論。秀の事も、聞かれるままに、素直に話せた。



(重子)
「それで?理恵ちゃんは、これから、どうしていこうと…その年で、一人で産んで、育てるなんて…並大抵の苦労じゃないよ!これから先」



(理恵)
「はいっ…でも私にとって、このお腹の子は、生きている証なんです!一度は私……
消えてなくなりたいって!死んでしまいたいって、そんな風に思っている時、体が変わった事に気付いたんです。
嬉しくて、それはもう、嬉しくて…
私は、この子を、どうしても、産みたい。秀と私の子供を…この子と共に、生きて行きたい!この子は私の希望なんです。
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