哀しみの瞳
(重子)
「それにしても、お腹の子供の事、その秀さんには、結局、言ってないんだろう?」



(理恵)
「いえっ、秀あての手紙に、書き残してきました。きっともう、読んでいるはずですけど……」



(重子)
「じゃぁ、その秀さんも、今頃は、相当、悲しんでるのと、違うかねぇ!理恵ちゃんが、何処へ行ったか、まるっきり分からないのだから!しかも、子供の事、知ったら、なおさら、辛いと思うよ!どうして、二人が二人共、悲しい思いをしなきゃいけないんだよぉ?」



(理恵)
「…………」
ここまで、秀の悲しむ姿を考えないようにしてきたのに、重子おばあちゃんに、徐々に話すうちに、哀しみが舞い戻って来た。



(重子)
「何だねぇ。また、辛い話しをさせてしまって、ごめんよ!泣きたいよねぇ?はいはい!今は泣きたいだけ、泣いた方がいい」



重子に優しくされた事で理恵は、堪えてきたすべての感情が、溢れ出てくるのを、止められないでいた。


暫く重子は、泣いている理恵の背中を何度も撫でてくれていた。
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