・約束・2
「あっ、ココよ」

オフィスのエレベーターを押し、扉が開いた。
村上君が事務所のある階を押す。
私はエレベーターの中の鏡越しに手櫛で髪を整えた。


『ドンッ』
エレベーターの鏡に大きな手がつく。


「え?」

振り向いた瞬間、村上君の唇が重なっていた。



「んっ!・・・ちょっと!!」

村上君の肩を両手で押し返し、エレベーターの隅に逃げる。



「な・・・にするのよ?」

唇を手で拭うけれど、直ぐには感触は消えない・・・



「口止め料は貰いました」

ニヤリと笑った村上君の笑顔は、悪い奴の顔つきだ。



・・・油断してた・・・

雅也との結婚で、村上君も私に恨みがあるんだ・・・

私のコト雅也には相応しくないって、認めてもらえてないんだった。




「もしかして、雅也に対する嫌がらせ・・・?」


「は?」


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