霧雨シェアハウス
霧雨シェアハウス
大学を出て数分の場所に、そのシェアハウスはあった。


霧雨シェアハウス。


この辺り一帯が霧雨という地名なだけで安易に付けられたらしいシェアハウスの2階に、私は住んでいる。


今年の春からこの大学に通うことになり、親戚が住んでいた部屋を譲ってもらった。譲ってもらった、とはいっても家賃は当然我が家…谷町家持ち。


大学デビューを、と思い染めた茶色い髪が視界の端で揺れた。今時大学生のようなフリルの服に身を包み、ブーティの踵を軽快に鳴らしながら商店街を行く。


理想の大学生像が、ここにあった。


バイトはしていない。学生のうちは親に甘えなさい、という親の好意?に甘えて学校が終われば真っ直ぐ家に帰ることにしている。バイトもそのうち…と、電柱に貼られたバイト募集のチラシを横目で一瞥しながら。


商店街の横道に入り、右へ左へと路地を行けば、霧雨シェアハウスは静かに建っている。


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