霧雨シェアハウス
小柄で細身。いつもワンピースに白いエプロン姿で、私でさえ目のやり場に困る大きな胸のマコさん。このシェアハウスのオーナーであるマコさんは、両親を早くに亡くしこのシェアハウスを継いだそうだ。本名はよく覚えてない。みんなこの人のことをマコさんと呼ぶから私もマコさんと呼んでる。


見た目は私より少し上、アラサーを感じさせないその愛嬌の良さは住人誰もから信頼され、慕われ、好かれている。


「今日の夕飯は…カレーですか?」
「うふふ…残念。肉じゃがでした!」


マコさんはこうして夕飯を当てをして、正解するとちょっとサービスが付いてくる。ご飯が多めだったり、お肉がちょっと多めだったり、そんなことだけど。


「慎之介くん、もう帰ってるんですね」
「うん。さっき帰ってきて、今部屋で宿題してるわよ」


小さなスニーカーの持ち主…高井慎之介くんは、小学3年生。マコさんの甥っ子で、よくこのシェアハウスに泊まりに来るので、「(仮)住人」の異名を持つ。慎之介くんのお母さんがマコさんのお姉さんで、バリバリのキャリアウーマンらしい。まだ会ったことないんだけど、旦那さんは単身赴任で日本をあちこち飛び回ってるとか。


そりゃあ一人息子を留守番させておけないし、ここならほぼタダメシって感じだもんね。


マコさんと軽く会話した私は2階の自室へと向かった。


シェアハウスとはいっても廊下に向かい合わせで並ぶ扉は、さながらホテルのよう。
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