好きで悪いか!
「じゃあ、そういうことで……」
立ち去ろうとする先輩を咄嗟に呼び止めた。
「あのっ…そういうことで、って?」
「彼女がいるから、君とは付き合えないってこと。気持ちは嬉しい、ありがとう。じゃあ」
早口で少し鬱陶しそうに、もう早く帰らせてくれと言わんばかりに、先輩は答えた。
まるでテンプレートに貼り付けたような返事。
まるで心のこもっていない「嬉しい」と「ありがとう」
そんなマニュアル対応で終わらせないでほしい。私の、人生初の告白を。
「待ってください。私、すごく勇気を出して、思いを伝えました。友永先輩も、本気で答えてください。園田先輩のことは別として、私のこと、どう思いますか? ちゃんと見て、答えてください」
いつも遠巻きに眺めるしかできない先輩の、視界に入りたい。風景としてではなくて、一人の女子として認識されたい。そう思って、やっと声をかけたんだ。
なのに、先輩はやっぱり風景のように私を流し見ている。
私だろうが、私じゃなかろうが、答えは最初から決まっているのだから同じだという風に。
そうじゃなくて、ちゃんと見てほしいと食い下がる私を、先輩はますます怪訝そうに見つめた。
「沙織のことは別として、ってのは、どういう意味? 本命がいてもいい、浮気相手でもいいってこと?」