好きで悪いか!
「そういう意味じゃないです。園田先輩がいるからとか、園田先輩と比べてどう、じゃなくって、私個人と向き合ってほしいって意味です。私は、彼女がいるいないに関わらず、先輩のことが好きですから」

 彼女がいるからしょうがないよねって、先輩に憧れるほとんどの女子は諦めモード。
 好きになってもしょうがないよって、諭されもした。

 だけど、それでも好きな気持ちもしょうがない。
 どうしようもないんだ。苦しくて、先輩を見ると胸がキュンとして、先輩を見れない日にはツイてないと感じる。好きで好きで大好きで、でも先輩は私の存在さえ知らなくて。
 そのことに、もう耐えられなくなってしまったから。

 知ってほしかったんだ。先輩に。
 私という、ちっぽけな下級生の存在を。先輩に恋焦がれている、このどうしようもない気持ちを。

 じりりと照りつける陽射しが、痛いほどに。
 いつも涼しげな、凛とした顔つきをしている先輩も、さすがに暑いという顔をしている。じわりと浮かび上がる玉のような汗。

「話が合わないようだから、はっきり言うけれど。いきなり呼び止められて好きだと言われても、実感が湧かない。初対面で君のことは全く知らないし、特に知りたいとも思わないな。彼女のいる男に、好きだと告げる気もしれないし、その自信がどこから来るのか、全く理解できない。分かりやすく言うと、君にいい印象は抱いていない。これ以上、炎天下の下で話に付き合わされると、キレそう」



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