好きで悪いか!
「差さない。男が日傘なんか差す? 『イマドキ、差すのよ』って、うちの姉にゴリ押しされて、持たされた。若いうちに紫外線を浴びすぎると、皮膚がんの発症リスクが高まるだの何だのって。俺は黒子が出来やすいから、特に気を付けろってさ。脅されてるみたいで、いい気しないよね。ってことで、どうぞ使って」

 留め具を外して傘を開くと、その柄を私に差し出し、先輩は笑った。

 その笑顔にドキリとしたついでに、目元の黒子に目が行く。
 言われてみれば、先輩は黒子が多いかもしれない。

 右目の目尻に、目立つ黒子。それから上唇の横と、首筋と。どれもセクシーに感じる。
 ウィークポイントではなく、チャームポイントだ。

「私は好きですけど。先輩の黒子。エロくていいですよね」

 思ったままを口にすると、先輩は呆気に取られたような顔をした。
 そして気を取り直したように、

「ありがとう」

 と言った。

 並んで歩き出す。
 先輩の貸してくれた日傘で、なるべく先輩の日除けにもなるようにと、差す角度を工夫する。

「今日、会ったら言おうと思ってたんだけどさ。沙織が来たから、話せなかったんだけど……」

 と先輩が切り出した。


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