好きで悪いか!
 噂には聞いていたけど、こんな豪邸に住んでいたとは。

 門扉の横に取り付けられた機械に、先輩が持っていたカードを差し込むと、セキュリティロックが解かれる。
 どこからか視線を感じて見上げると、防犯カメラが作動中。


「先輩、誘拐とかされないんですか? 一人で出歩いたりして」

 ここまで厳重警戒な家に住んでいるのだから、人間にもボディガードが要るでしょって気がしてくるのだけど。
 黒塗りベンツの運転手に送迎される訳でもなく、先輩のアシは普通に電車だったり、徒歩だったり。学校にも電車で通っている。

「中学までは、どこに行くにも車送迎。けどもう高校生だからね、自分の身は自分で守れないと。女の子はそうもいかないだろうけど、俺は男だから。自分の身だけじゃなくて、大切な人も守れないと」

 静かに、だけどしっかりと意志を込めた口調で、先輩が言った。

 さすが先輩、かっこいい。見た目だけじゃなくて、芯から男前だと思う。
 だけど先輩の言葉に、胸がチクリと痛む。

“大切な人も守れないと”

 それって園田先輩のこと、なんだもんなあ。







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