好きで悪いか!
 先輩に案内されて、勉強部屋に通される。

『勉強部屋=自室』というのが私の一般常識だけど、友永家の常識は違うようだ。先輩が寝起きする部屋と、勉強する部屋は別らしい。

 大きな書棚に囲まれたスペースに息を呑んだ。何これ、まるでプチ図書館だ。
 書斎というより、図書館の雰囲気。
 部屋ではなくて廊下の一角のオープンスペース。大きな窓からの採光も明るく、閉塞感がなく広々と感じられる。

 さすが不動産王。自宅の造りにもこだわってるなあ。
 感心して立ち尽くす私に、先輩が声をかける。

「適当に、座って」

「ハイ、失礼します」

「ちょっと待っててね」

 言い置いて、どこかへ行こうとして止まった先輩の視線を追って、志乃さんを発見した。
 飲み物を持ってきて来てくれたようだ。トレーを持って、しずしずとやって来た。

「失礼します。どうぞ」

 長机の端に、そっと置かれるトレーの上には、ジュースが入ったコップと、フルーツ皿。桃と梨が綺麗に切られ、上品なフォークが添えられている。

「わ、すみませんっ。ありがとうございます!」

「あーもう、いいって言ったのに。俺がするから、出しゃばんなくていいって」

「あら、そんな言い方ないでしょ。いっちょまえぶっちゃって。お姉様に向かってあんまり可愛げがない口きいていると、可愛かった頃の女装写真、見せちゃうわよ?」



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