好きで悪いか!
 少し悪戯っぽく言って、先輩は私を見つめ、瞳を細めた。
 その親しみが込められたような表情に、胸がどきんと高鳴る。

 これが「オトモダチ」効果か。

 お姉さんの志乃さんが言っていたように、先輩は学校で「その他大勢」に対しては、ちっとも愛想がない。
学校で人気のあるかっこいい先輩というのは、大抵がアイドルみたいに愛想が良くて、へらへら笑ってチャラチャラしているのに。
 友永先輩にいたっては、壁がある。

 簡単には人を寄せ付けない雰囲気があって、笑顔も安売りしない。
 ただ壁の中に入れる人間に対しては、とても誠実で優しいというのを、この数ヶ月先輩を観察し続けて知った。

 だからこそ、その他大勢は憧れる。
 ぶれずにしっかりと自分というものを持っている友永先輩と、先輩に認められた特別な人たちに。

 ただそこにある風景としてではなく、先輩の「特別」になりたい。
 その私の願いは、これで叶ったとも言える。

 あの金の茶釜のお陰で。アラジンと魔法のなんちゃらみたいだ。



 先輩との夢のような時間は、刻々と過ぎた。
 どうして楽しい時間はあっという間で、待っている時間は長いんだろうと、恨めしく思う。

 けど、今日の収穫はものすごく大きかった。
 先輩と次の約束が出来たからだ。しかも二つも。

 一つは、「次は散歩しながら勉強しよう」というものだ。
 私の「擬人化記憶術」の弱点を、先輩がズバリ突いてきたからだ。

「古賀さん、英語は? さすがに英単語覚えるのに、擬人化はないよね? 数も数だし。歴史や古文は得意でも、英語数学が苦手だったりしない?」

「……します。めっちゃします。数学はまだ何とか……なんですけど、英語が超苦手で」





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