好きで悪いか!
 それが一つ目の約束。
 二つ目の約束は「生徒会の会合音声を文章に起こす」というものだ。
 それは本来、生徒会書記の仕事なのだけど、その書記さんが手に怪我をしてしまって、出来なくなったらしい。

 ノートを纏める作業が好きだという話をしたときに、先輩がチラリと「書記の仕事やってもらえたらなあ」と口にしたのを聞き逃さず、食い付いて、頼まれごとにした。
 先輩は遠慮したけれど、「纏め作業が、本当に好きなんです」と言い張って。

 ちょっと強引だったかもしれない。
 でも、私でも先輩の役に立てることがあると思ったら、嬉しくて。

 音声データは「一応、生徒会外の持ち出し禁止」らしく、学校のある日に生徒会室に呼んでもらって、作業する予定だ。
 一般生徒が立ち入ること自体がご法度の生徒会室に、呼んでもらえると思ったら、今から緊張しまくりだけど。




*****


 先輩と二つの約束を交わしたまま、夏休みは終わった。

 結局あれからも先輩は忙しくて、勉強に誘ってもらえる日はなかった。
 私もバイトに明け暮れていたし。

 先輩が忙しいことは、夏休みが始まる前から分かっていたことだ。
 受験生である上に、生徒会長としての仕事もある。

 その最たる仕事である学園祭が、十月の初旬にある。
 そこまでが「現生徒会長」の友永先輩の仕事で、それ以降は二年生の「副生徒会長=次期生徒会長」へ、実質的な役割を引き継ぐのが慣習らしい。



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