好きで悪いか!
 うう、怖い。先輩、怒ってる。でもしょうがない、そうなんだもの。

「……はい、そうです」

 もう本当に迷惑だ、今後一切関わらないでくれと言われるんだろうか。それもしょうがない。先輩が迷惑しているのは事実だ。
 変な噂が出回ったせいで、先輩の評判は落ち、悪者になってしまっている。完璧にお似合いだった園田先輩を一方的に捨て、ちんちくりんな一年を選んで幻滅だと、大勢のひんしゅくを買った。

 勿論私みたいに誰かに嫌がらせを受けることはないし、評判が落ちたからといって、先輩の人気が下がったわけじゃない。
 園田先輩が相手だったから、諦めるしかないと今まで納得していた女子たちが、私が相手では諦めがつかないと憤慨しているのだ。
 
 私だって片想いしているだけなのに。
 一人歩きしてしまっている噂は、私が先輩を諦めない限り、収拾がつかないんだろうか。


「見込みがないと分かってても、俺のことが好き?」

 まるで問い詰めるように、どこか冷たく感じる瞳で、先輩がじっと私を見て尋ねた。
 今日の先輩は、どこか様子がおかしい。

 園田先輩と別れて、悪く噂されながらも、先輩は落ち着いていて、変わらない調子で私と接してくれていた。むしろ、生徒会の仕事を手伝うことが増えて、以前より頻繁に話すようになっていた。
 それで私への嫌がらせがひどくなってきたんだ。

「はい……すみません」

 浅い溜め息が吐かれる。

「付き合おうか」

「え?」

「古賀さんがそれでいいなら。俺のせいで嫌がらせされてて、いくら否定しても噂は収まらないし。なら、本当に付き合おうか。ただの後輩にしてあげられることは限られてる。彼女になってくれたら、守りようもあるし」


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