好きで悪いか!
先輩と晴れて恋人となった。
“彼女になってくれたら、守りようもあるし”
先輩の言葉は私の脳内で都合よく変換されて、「彼女になってください。絶対守ってみせる」に聞こえた。二つ返事で、ハイよろしくお願いしますと答えた。
ずっと恋焦がれていた先輩に、ドラマのように劇的な告白を受けて、すっかりキャパを超えて舞い上がってしまったんだ。
勘違いだと気付くのに、そう時間はかからなかった。
「それって、みやびをイジメから守る手段として、交際って形式を取るっていう意味じゃねえの? 生徒会長様、金持ち学園の王子様で、権力者なんだろ? その権力者が認めた彼女には、さすがに手え出せないって、モブも思うだろうし」
不躾な隣人、雅紀に指摘されるまでもない。
あれから先輩とは『恋人として』付き合っているけれど、甘い雰囲気になったことは一度もない。
むしろ『お友達』だったときのほうが、自然な笑顔を見せてくれた。今はすごく厚い壁を感じる。すぐ隣にいても、先輩の心は見えないし、触れられない。
受けていた嫌がらせは、先輩が私との交際を公認した翌日から、ぴたりと収まった。
雅紀の言うとおり、友永先輩は学園の権力者だ。生徒を代表する生徒会長というだけでなく、学園に多額の寄付金を納めている、友永不動産の御曹司だからだ。
友永一族は地元の有力者であるからにして、色々な方面で顔が利く。怖いというイメージも強い。
先輩に「君には関係がない」と言われていたときには嫌がらせされ、先輩が「大事な彼女だ」と周囲に紹介してくれた途端、腫れ物を扱うように誰もが慎重に私に接してくる。