好きで悪いか!
唯一、私に攻撃的な態度を取ってきたのは、園田先輩だ。
たまたま校内で顔を合わせたとき、人目に付かない場所に引きこまれて、また一方的な話をされた。
「綾仁と付き合ってて、どう? 付き合ってても虚しいでしょう。だから忠告したのに。私はあなたに負けたんじゃないって分かった? あなただって、絶対に勝てないんだから。まあ、私にはもう関係ないけど」
園田先輩が何と戦っているのか、そのときは分からなかったけれど。
友永先輩の近くにいればいるほど、分かってきた。嫌でも気付いた。
先輩には、好きな人がいる。
その人と話すときだけ、先輩はいつもの先輩じゃない。
子どもっぽくムキになったり、照れて逆ギレしたり、苛立ちを隠しきれなかったりする。追い払った彼女を視界の端でそれとなく追っている。
彼女を話題にするときの先輩は、少し得意げでどこか嬉しそうで、それでいてひどく暗い瞳をしている。
「先輩と志乃さんって、八つ違いなんですね。わりと離れてますね」
何も知らずに迂闊な発言をしてしまったとき、先輩が教えてくれた。
「ああ、血が繋がっていないからね。父が再婚をして、後妻の連れ子が姉なんだ。だから似てないし」