好きで悪いか!


「でも、結局先輩は一生後悔するんじゃないですか?」

 私はまた余計なことをしようとしているのかもしれない。でも、いま言わないと私が後悔する。

「気持ちを伝えないまま、志乃さんが結婚したら。先輩は志乃さんのこと、好きなんですよね? 姉弟だから駄目だと思ってるんだと思いますけど、血が繋がっていないんだから、いいんじゃないですか? 好きだって言っても」

 ずっともやもやしていた想いを、先輩にぶつけた。

 先輩が園田先輩と付き合っていたときのもやもやとは、また違う。先輩が園田先輩と付き合っていたときには、辛かったけど諦めもついていた。
 先輩が幸せならそれでいいと。先輩が望んだ形に納まっているなら、それでいいと。

 でも真実は違った。
 志乃さんとは決して結ばれないと絶望している先輩は、それを誤魔化すようにして園田先輩や私と付き合っているだけだ。

「何言ってるの? 姉をそんな対象に見たことはないよ。気持ち悪い」

 不快そうな表情を浮かべた先輩は、吐き捨てるように言った。

「血が繋がってないから、いい? なわけないでしょ。血が繋がってなくても、姉だ。それに婚約者もいる。明後日、結納だよ?」

「だから、です。結納が終わったら、結婚してしまったら、どんどん取り返しつかなくなるじゃないですか。今ならまだ、ギリギリセーフじゃないですか? 志乃さんも、もしかしたら先輩のこと、好きかもしれませんよ。見てて、そう思うときありますもん。ただのブラコンじゃないなって、思うとき」


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