好きで悪いか!
 乗せてくれるというのなら、乗らない手はない。
 なにしろ暑い。できるなら、労せず涼しく帰りたい。

「ラッキー。ありがとう」

 ママチャリ最高。
 荷台の抜群の安定感に、大きな前カゴ。

 そこに背負っていたリュックを入れて、後ろに私を乗せると、雅紀はよろよろとペダルを漕ぎ始めた。
 何だこの安定感のなさは。

「ちょ、大丈夫!?」

「意外に重い」

「失礼な。なんでそんなヘロヘロしてんの? 陸上で鍛えた脚力、どこ行ったわけ?」

 背は平均、痩せ型。
 運動はそこそこ出来て、中学では陸上部だった雅紀。

「んなもん、三ヶ月でどっか行ったわ」

「三年かけて培ったのに?」

 なんて非効率。
 例えばピアノなら、ある程度基礎が出来ていれば、しばらく全然弾かなくても、指が覚えているのにな。
 筋力は、そうはいかないものなんだろうか。

 それにしても、ひ弱すぎる。

「しょぼ」

「しょぼ言うな。乗ってる身で。降りるか?」

「あれえ、パピコ食べた口が、そんなこと言う?」

「言わないよね~」




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