アイドルとボディガード

撮影場所から事務所に帰ってきた私達。
帰りはちゃんと藤川さんの車に乗せてもらった。

しかし、デスクに座ることもなくそわそわ落ち着かない様子の藤川さん。

「社長、なんていうかな」

「なんでそんなこと気にするの?皆喜んでたんだから別にいいじゃん」

「千遥ちゃんは清純派アイドルなんだよ!」

悶々と悩む藤川さん。
実は撮影中、調子に乗ってしまった私をいつ止めに入るべきか1人葛藤していたらしい。

そんな藤川さんをよそに煙草を咥えた奴の元へ。

「どう?」

「あ?」

「だから感想、撮影見てたんでしょ?」

「別に、特に」

「はぁ?」

「強いて言えば、悲惨」

「悲惨?」

「胸元あたりが」

「あんたね、はっきり言ったらいいじゃないの貧乳だって!」

ガンとテーブルを叩くと私は勢いよく立ちあがった。
こっそり藤川さんが奴に、それは禁句です!と慌てているが、全部丸聞こえだっつーの。

私は自分が出てる雑誌を数冊持ち寄り、出てるページを開いて奴に見せつけた。見出しには、今旬の~、売れてるアイドル~、フレッシュガールやらなんたらかんたらといった文言が並ぶ。

「これが、なんだよ?」

「私は一応アイドルなの!しかも今結構売れてる!」

「そういうの普通、自分で言うか?」

「私がアイドルだっていう認識をして欲しいの!つまりもっと、丁重に扱って欲しいってこと。今日のバイクで送迎なんて言語道断ありえない!もし事故にでもあったらどうするの?」

そう言ってまくしたてるも、奴は煙草の煙を吐いてさぞめんどくさそうに聞いている。
イラっときて頭にかぁっと熱いものが上ってきたところに、藤川さんが割って入ってきた。

「しょうがない、今日の帰りは僕が送って帰るよ」







あのバイクの男は誰?
まさか彼氏じゃないよね。


そして翌日、また郵便受けに入っていた白い手紙。
いつものことだけど、ぞっとする。

「あーあ、また来た」

「例の粘着質なファンってこいつのことですか?」

奴が初めてここで何かに興味を持ったように覗き込んでくる。

「そうなんだ。まだ接触はしてきてないんだけどね」

横から入ってきた藤川さんも得意の困り顔。



「あの藤川さん、ちょっといいですか?」

「え?僕?」

こそこそ怪しい2人に聞き耳をたてようとしたら、奴に睨まれてしまった。
なんでストーカーされてるのは私なのに、その張本人が蚊帳の外っておかしくない?

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