アイドルとボディガード
千遥のボディガードを辞めて数日。
いきなりきた着信に出ようとしたが、すぐに切れてしまった。
何か不吉な予感がする。
もう関係ないのだから気にする必要はない。
あいつとはもう関わらないと決めてろくに別れも告げず辞めてきたのだから。
今さら……
不安を払拭しようと携帯のGPS機能を使って、千遥の行方を追ってみた。
すると居場所を示す印はとあるホテルを指している。
不安が現実になる可能性が出てきて、胸がドクンと大きく鼓動する。
まさか、あいつは断るって言ったのに……
だけど自ら行ったのなら、俺なんかに連絡なんて寄越さないだろう。
やっぱり何かあいつの身にあったとしか思えない。
あいつと関わるのはこれで最後だと自分に言い聞かせ、その目印を元に奴の元へ急いだ。
運良くそこのホテルのオーナーは、昔仕事関係で会ったことのある人だった。
電話で連絡し大まかに訳を話すと、穏便にと釘を刺されながらもフロントに話を通しておいてくれた。
そこでマスターキーを借りると、以前名刺に書いてあった名前の賀川で借りている部屋はないかと尋ねる。
部屋の番号を聞くと、俺はその部屋へ急いだ。
部屋を開けると、何人もの男達が何かを取り囲んでいた。
その中心には少女を組み敷く男の姿があった。
頭が沸騰するようだった。
俺は怒りに任せて、取り囲む邪魔な男達を蹴り倒し、その中心にいた男を力いっぱいぶん殴った。
気を失った千遥の姿に、一瞬殺意が芽生える。
しかし、衣服はまだ身に着けている。
未遂だったことに心底安心する。
本当に間に合って良かった。