アイドルとボディガード
「何だ、お前は!」
突然の乱入者に殴られた男が声を荒げる。
こいつが賀川だろうか。
「すいません、ついカッとなって。大丈夫ですか?」
「これが大丈夫に見えるか?」
鼻血を出しながら言う賀川とやらに、俺は蔑むように微笑んだ。
「お楽しみのところ申し訳ないですけど、この子は連れて帰ります」
「調子に乗るなよ……っ、こっちは何人いると」
そう言って退路を塞ぐ馬鹿な男達。
「はっ、雑魚が何人いようと関係ねぇ。あんたら俺とやりあいたいってことは、それなりに覚悟できてんだろうな?」
軽く笑って、男達を睨みつける。
「あーあ、一応未遂だし、お前らには手出ししないでやろうと思ってたんだけどしょうがないよな。そっちがやる気なんだもんな」
「は……?」
「ま、正当防衛ってことで。とりあえず下衆なのには変わりねぇが一応一般人てことで手加減しといてやるよ」
まるで動かない人形をなぎ倒していくように、一方的な暴力を振るっていく。
最後に残った賀川が捨て台詞のように吐いた。
「こんなことして、小泉千遥はもう終わりだな……っ」
「終わらねぇよ、こいつはあんたらみてぇな汚い大人の力なんざ借りなくても、自分で這い上がれる」
「ふざけるな、これだけのことをしてただで済むとは思うなよ」
「それは怖いな、口封じしとくか」
「何を……っ」
「二度と喋れなくなるよう、こなごなにしてやるって言ってんだよ」
そう言って賀川の顎を片手で掴む。
そして、ぎりぎりと人並み外れた握力で力を加えていく。
俺が本気だということを悟ると、賀川は情けない声を出して懇願した。
「や、やめてくれ」
「あの子が感じた恐怖と痛みはこんなもんじゃない。二度とあの子に近づくな」