アイドルとボディガード




初ドラマは、少女マンガが原作でドロドロの恋愛もの。
その中で私はドロドロを生み出す悪女役。

世間では原作の知名度も手伝って、女性中心に人気が出ているらしい。
深夜枠にしては視聴率もなかなか良いとのこと。

私はそういう情報をネットで調べたりしない。
一緒に悪口まで見てしまう可能性があるから。
そんなの、いちいち気にしてられないけど。
私にはまだそれを受け止めきれる程の余裕はなかった。



あの日から、監督からの厳しい声はエスカレートしていった。
私は、いつ呆れらるか内心ハラハラしながら毎日撮影に臨んでいた。

本当に目をかけてもらってるのか、それとも本当に演技がダメダメで黙っていられなくなったのか。

……だめだ、考えたところで納得いく答えなんて出ないんだから。
考えるだけ無駄、今は仕事のことだけ考えよう。


撮影中、自分の出番がひとまず終わり休憩室へ。
廊下で次の出番の須藤リサさんとすれ違う。


「すいません、撮影長引いて……」

私はいたたまれない気持ちで謝る。

「しょうがないよ。ドラマとか初めてなんだもんね?」

「はい」

「気にしなくていいからね?」

「すいません、ありがとうございます」

そこにリサさんのマネージャーらしき女性がパタパタと走ってくる。

「リサちゃん!監督がね、ちょっと脚本変えたいって」

「え?なんで?」

リサさんは突然の話に不審そうに聞き返すと、2人で何か話しながら言ってしまった。

脚本を変えたい?いきなり?
ちょうどいいところにやって来た藤川さんに聞く。

「監督が脚本変えたいって本当?私の演技がダメ過ぎて?」

「いいや、そういう訳じゃないと思うけど。千遥ちゃんの演技はすごく良くなってると思うし」

自画自賛じゃないけど、自分でもそう思う。
監督の指導もらえるようになってからすごく成長してると思う。



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