アイドルとボディガード
すっかり大人しくなった奴から鍵を奪い部屋へ入った。
部屋の中心のベッドへ寝かされた千遥。
その傍らにさっきパーティー会場で見かけた若い男が座り携帯をいじっていた。
こいつが三谷とやらか。
奴は、俺という突然の見知らぬ来訪者に動転していた。
「お、お前、誰だよ」
「この子の知り合いだ」
「は……?」
「こんな卑怯な手を使って千遥をハメようとしたこと、バラされたくなかったら大人しく出てけ」
そう脅すと奴は狼狽えながら部屋から出て行った。
千遥の無防備な寝顔を見て思わず口元が緩む。
本当に危なっかしい。
「きりう、」
不意に紡がれた言葉に、起きたのかとビクついたが寝言だったらしい。
変わらず規則正しい寝息をたてている。
俺はその後藤川さんを呼んで、千遥が目を覚ます前に足早に部屋を後にした。