アイドルとボディガード


また桐生と連絡がとれなくなった。

あれ程泣いて会えなくなるのは嫌だと言ったのに。



私の気持ちが重かったの?

でも、それならそれで一言位、言ってくれても良かったんじゃないの?

桐生はいつもそう。
何も言わずに私の目の前から姿を消してしまう。





「ねぇ、藤川さん、桐生から連絡来てない?」

「……今日で、それ何回目?」

藤川さんは少しうんざりしたように言う。
いつのまにかそれが私の口癖になっていた。

「千遥ちゃんこの際だから言うけど、もう桐生君には関わらない方がいい」

「どうして?応援してくれてたじゃない」

「やっぱりアイドルが恋愛なんてまずいよ。もう桐生君のことは忘れるんだ」


桐生が何か危ない仕事をしているのは知っている。
藤川さんが止めた理由は、それが関係しているのか。


でもそんな簡単に忘れられたら苦労しない。




連絡がとれなくなって数日経った頃。

事務所に突然の来訪者。

受付から、須藤リサが来てると連絡があったのだ。

須藤リサに会うのはあのパーティーの一件以来だった。

外で話したいとのことで、受付の須藤リサの元へ行く。


まるで何事もなかったかのように普通に挨拶を交わした後、近くのカフェに入った。

神妙な面持ちだ。
一体私に何の用があるんだろうか。

お互い飲み物を頼んで、一息ついた頃須藤リサが口を開いた。

「手短に済ませたいから要点だけ言うけど、あなたのせいで今、桐生君大変なことになってるのよ」

鋭い目で私を睨む。

「何かっ、何か知ってるんですか?」

わらにも縋る思い須藤リサに詰め寄る。

そこで全てを知らされた。
桐生の素性や、私と桐生との熱愛写真が撮られてしまったこと。

そして、それをなんとかしようとして今川口組で軟禁されていることを。




「……須藤さん、川口組ってどこにあるんですか」

「どこって、分かってるヤクザだよ?」

「はい」

もう覚悟は決まってる。

だって、これは私のせい。
私が会いたいってしつこく言わなかったらきっとこんなことにはならなかった。

それで桐生が罰せられるのは耐えられない。


ただ、好きな人に会いたかっただけなのに。
会って普通にごはん食べただけなのに。

それが写真一枚なんかで、脅される材料になるなんて。

桐生を陥れた奴を、私は絶対に許せない。


ねぇ、桐生私はいつも桐生に助けてもらってばかりだったけど。

今度はきっと私が桐生を助け出して見せる。



だから、どうか無事でいて……!




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