無理が通って道理も通す。
………

「ふう。これくらいでいいかな」

来週使う資料のコピーを何十部が印刷したあと、手元の時計をみる。

「16:53」

あと7分で定時だ。
どうしよう。微妙な時間だな。

今から何かするのは、中途半端過ぎるし、かといって残業するのはなぁ……

課長、極端に残業嫌がるひとだからなぁ……

前に残業申請した人がいたのだが、めちゃくちゃ嫌そうな顔でしぶしぶ納得していた感じだった。

多分行きつけの飲み屋の席を確保できないからだな……

残業申請すると課長は必然的に居残りだし。

そんなことを思いながら席に戻ると書きおきが貼られていた。

やけに力強い字。課長かな。
そこには。

「お仕事お疲れさん。午前中は立ちっぱなしで疲れたでしょ?今日は定時で上がったことにして帰っていいよ」
と書いてあった。

課長……
なんて心配りができる人なんだ。

年が離れていなければ惚れてしまいそうだ。……いや、惚れてはいけない理由があるんだが…

まぁそれはいい。
せっかくのご好意だ。

遠慮せず甘えることにしよう。

そう思いたつと、手早く資料をファイルにまとめ、カバンを整理して帰り支度をはじめた。
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