キミとひとつになれたら





「僕に大丈夫って、声をかけてくれた。傘を差し出して、優しい表情で」




……そういえば、そんな事もあったっけな…。


彼に言われて、やっと思い出した。その日の事。






「小春ちゃんは“使って”って僕に傘を渡して走って行ってしまった。ほんの些細な事だけど、嬉しかった」



暗闇の中、カーテンから月明かりが差し込み、室内を微かに明るくした。





ジーっと四ノ宮くんの横顔を見つめてると、彼もこっちを見て、目が合った。







「高校に入って、また会えた時は本当に嬉しくて、運命だと思った」



……そんなロマンチックなもんじゃない。



だって私はそんな事…綺麗に忘れていたんだから……。







「小春ちゃんが、初めてだった。初めて、手を差し伸べてくれた……」



彼の、もう片方の手が、私の頭を撫でた。





「今度は僕が、小春ちゃんに手を差し伸べる番」



暗くてよく見えないけど、彼は笑ってる。




優しい言葉に、優しい笑顔。
ドキッと胸が高鳴る音がした。



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