海賊と人魚姫
波の音が聞えた気がした。
海に近い場所にいるからだろうか、と思ってすぐに、あぁ違うと自分で気が付いた。
これは夢だ。
幼いころ、よく見ていた海の夢。
夢の中だと分かっているのが不思議だった。
意識はどこかぼんやりしていて、まるで映画を見ている観客のような立ち位置。
そしてうすぼんやりとした膜のある世界を、あたしは小さいころ、本当によく見ていた。
最近は見ていなかったのだけれど、久しぶりに今日、海を見たからなのかもしれない。
世界の向こうにいるのは、あたしに似た顔立ちの少女だ。
けれどあたしと違って、髪の毛が短い。
そうするとまるで男の子みたいにも見えることを、夢の中であたしは知った。
いつもの制服とは違い、映画の中で海賊が着ていたような衣服を身に付けて、あたしが笑っている。