僕らの記憶
「翔太っ…翔太!!!!!」

あまりに急いでいたため傘を置いてきた。

びしょびしょになりながら声がした方に向かって走る。

「ハア、ハアッ、翔太!!!」

『和也…』

また、声がした。
後ろから、気配がした。
後ろを振り向くと、いつもとかわらない翔太が、目の前に立っていた。

「翔太ッ…!!!」

『和也…。』

俺の顔を見ると、翔太は悲しそうな顔をした。

『和也は、こっちに来ちゃダメだよ』

翔太の体が透けていく。

「翔太!翔太ァ!!!」

翔太の腕を掴む。
………はずだった。

俺の手は翔太の腕をすり抜けた。

そのとき、本当に翔太は死んだんだな。…と思った。

よく見ると、今自分が立っている場所がわかり、寒気がした。

そこは崖のようになっていて、下には大雨で荒れた海。

俺は、すぐその場から立ち去った。
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