涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
Prologue
◇◇◇
二月、中学生活がもう少しで終わる頃。
冬の冷たい海を、二人並んで眺めていた。
白い砂浜に青い海。
ここが私達の遊び場で、
暑い夏も寒い冬も、いつも波音を聴いて過ごしていた。
他愛ない学校の話しに笑った後、彼は急に黙り込んだ。
焦げ茶色の前髪が、潮風にサラサラと流される。
小麦色の肌が少しだけ赤みを帯びて、
心を隠すように、彼は長い睫毛を伏せた。
「夕凪(ユウナギ)?どうしたの?」
急に無口になる彼に、私は聞いた。
夕凪の雰囲気が、いつもと違う気がした。
ゆっくり瞼を開ける夕凪。
切れ長の美しい瞳が私を捕らえた。