涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
背中から強くぶつかられ、また転んでしまう。
ぶつかって来たのは、あの時水飲み場にいた、上條君を好きな女の子だ。
上條君が声を大きくする。
「ファールだろっ!
宮田!笛吹けって!」
審判の宮田さんは、その言葉を無視した。
私が突き飛ばされても、背中を蹴られても、試合を止めることはない。
まるで公開リンチにあっている気分だった。
応援の生徒達も異変に気付き、ザワザワしている。
それでも宮田さんは、くわえている笛を吹かなかった。
試合時間は、残り5分になる。
点数は0-0のまま。
コートに立つ女子全員が狙っているのは、ゴールではなく私だと、
はっきり気付いていた。