涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
ボールがサイドラインを割り、スローインになる。
スローインするのは、佐伯さん。
すっかり怖じけづいた私は、ゴールから離れ、
ボールが来そうにない位置に逃げてしまう。
それでも佐伯さんは、私を狙う。
ニヤリと笑う彼女と、目が合った。
彼女の手から離れたボールは、
綺麗な孤を描き、私の頭上に落ちてくる。
敵も味方も、一斉に私の周りに集まった。
誰かに足を踏み付けられた。
背中を膝で蹴られ、横から強い力で突き飛ばされた。
右足首が変な方向に曲がり、鋭い痛みを感じた。
「キャア」と悲鳴を上げて倒れてしまう。
倒れる私のTシャツに、複数の腕が伸びてきた。
Tシャツがビリッと音を立てた気がした。
サッカーボールは誰に触れられることなく、コートに転がっている。
私が地面に倒れた時、やっと試合を止める笛が鳴った。