涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
ここは自宅から直線距離で、200メートルほど離れている。
海の家の前の砂浜は、海水浴客で賑わい、サーファーはいない。
海ににょっきり突き出た船着き場が、海水浴場とサーフィンエリアを分けている感じだ。
ビーチは子供連れの母親や、若者達で賑わっていた。
レンタル浮輪の横を通り、店内に入る。
昼時の海の家は、ちょうど忙しさのピーク。
母親が私を見つけて、早口で言う。
「潮音、遅ーい!
早くこっち!夕凪と軽食係やって!」
バイクで帰った夕凪は、バスの私より早く着き、
もう仕事を始めていた。
店の白いTシャツに、サーフパンツ姿。
テーブル席のお客さんに、焼きそばとカレーライスを出していた。
夕凪は私をチラリ見て、何も言わず、次の注文を取りに行く。
私は空の食器やグラスを片付け始めた。
口元は緩んでいた。
仕事が忙しくても、嬉しい。
夕凪と一緒に働けることに、幸せを感じていた。