涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
午後4時。
太陽はかなり西に傾いていた。
急にお客さんが減り、海の家の賑やかさが終わりに向かう。
帰り支度をした客が、レンタル浮輪やビーチパラソルを返却に来る。
シャワールームの案内をしたり、
預かっていた荷物を返したり。
夕方は焼きそばを作ることなく、そういう仕事に追われる。
ふと夕凪を見ると、母に何かを話しかけている。
母は
「いいよ、お疲れさん。
また明日もお願いね」
そう答えていた。
海の家を上がった夕凪は、これからガソリンスタンドでアルバイト。
ガソリンスタンドのバイトは、高校に入学してすぐに始めたみたい。
目的は、ミニバイクではない普通のバイクを買いたいから。
夕凪がお金に不自由している姿は、
小さな頃から見たことがなかった。
一緒に暮らしていない分、両親は十分に仕送りしているのだと思う。
バイクが欲しいと連絡すれば、お金を出してくれそうな気がする。
それでも夕凪は、自分で働いて買いたいのだろう。