涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
 


去年、サーフボードを新調した時もそうだった。


うちの父がタダでやると言っても、断っていた。



海の家でバイトしたお金を全部使い、

本当はそれでも足りなかったけど、
父がセール品ということにして、半額で夕凪に売ったのだ。



自分で稼いで買ったサーフボードを、夕凪はとても大切にしている。



バイクもボードも、自分で買いたいと思う夕凪。


頑固で、意地っ張りなところがあるよね…




夏の太陽に後押しされ、
思い切って夕凪の背中に声をかけた。



「夕凪、また明日ね!」



夕凪は一瞬足を止める。

こっちを振り向かないけど、片手を上げて応えてくれた。



私の隣には母がいる。

きっと母の手前、無視できなかったのだろう。



それでも嬉しかった。

少しずつ、少しずつでいいから、離れた距離を縮めたい…



嫌いと言われる度に、もうダメだと凹むけど、


元に戻りたい…

その気持ちを、変えることはできなかった。




―――――…





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