涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
 


夕凪と離れて仕事中の私は、その様子に少し笑ってしまった。


突っ込まれて困るなら、元の髪色に戻せばいいのにと思っていた。



レンタルうきわを貸し出しながら夕凪を見ていると、

振り返った彼と目が合ってしまう。



不機嫌になる顔…

スッと逸らされる、切れ長の瞳…


夕凪の態度に、今日も心が傷つけられる。



一緒に働いた10日間、
私達の距離は一進一退を繰り返していた。



仕事に関することは、会話してくれる。


「ビーチパラソル、あと何本ある?」

と聞けば、

「3本」

と答えてくれる。



母や父が側にいる時に、

「暑いね、コーラ飲む?」

と声をかければ、

「もらう」

と言ってくれる。



一歩前進したように思ったけど、二人の時は…

やっぱり話しかけても、無視される。


今みたいに、目が合ったらすぐ逸らされる。



そんな時、夕凪に許されていないことをヒシヒシと感じ、

その度に弱い私は、傷付いてしまう。



私達は、寄せては返す波のよう…


近付いたと思っても、やっぱり夕凪は離れて行く…




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