涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
立ち上がり、体についた砂を叩いて落とした。
それから夕凪の手を取り、引っ張って立ち上がらせる。
「私達の“いつもの場所”に行こうよ!」
そう言うと夕凪は、振り返って駄菓子の富倉の方向を見た。
私は笑った。
「また擦れ違ってる。
あっち、船着場!」
夕凪と手を繋ぎ、無人のコンクリートを歩いた。
夕陽は西の空低く、沈む準備をしていた。
コンクリートの端まで歩き、足を止めた。
「あの日の大切な話し、今聞いてもいい?」
夕凪は大切な話しがあると、私を呼び出した。
その内容は何となく分かるけど、きちんと言って欲しかった。
期待が膨らみ笑顔を向けたのに、
なぜか夕凪の顔が曇ってしまう。
茶色の瞳が揺れていた。
波に視線を落とし、沈んだ声で言われた。
「もう、遅いんだろ?
潮音は…… 上條と……
あいつの言う通り、俺、馬鹿だよな。
今頃言っても、遅すぎるよな……」