涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
夕凪が、また泣きそうに顔を歪めた。
繋いでいた手を離し、背を向けてしまう。
「俺、良かったとは言えないけど、上條はいい男だよ。
悔しいけど、俺なんかよりずっと、潮音に似合ってる……」
夕凪は勘違いしていた。
私はクスリと笑って、大きな背中に言った。
「私ね、上條君と付き合っていないよ」
夕凪が、勢いよく振り返った。
物凄く驚いた顔を見せるから、
声を上げて笑ってしまう。
「付き合って……ないのか?」
「うん。 断ったよ。
上條君と付き合っても、夕凪を好きな気持ちは消せないもの……」
放課後までは、上條君と付き合うつもりでいた。
心が疲れてしまい、優しい彼に逃げたいと思ってしまった。