涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
父が本気で怒っているわけじゃない。
昨夜、夕凪とのことを報告したら、すごく喜んでくれた。
父は嫌がる夕凪の首に腕を回し、
坊主頭をワシワシぐりぐり、執拗に撫で回している。
私達を祝福する一方で、父親として嫉妬の気持ちもあるみたい。
珍しく、母も早朝の海辺に出て来た。
夕凪に構う父に、一喝入れてくれる。
「ケンちゃん、もう止めときな。
波乗りする時間がなくなるよ」
「ゆみちゃ〜ん!
夕凪が、俺の潮音にチューしてたんだよ〜?」
「キスくらい、いいじゃない。
もう高校生なんだから」
「そんなっ!!
俺の潮音が…… 純真無垢で天使みたいな潮音が……」
「そろそろ、子離れしなさいよ」
子離れしなさいと怒られた父は、
私のキャラ弁を作るために、すごすごと帰って行った。