涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
 


早朝の海岸は、涼しい風が吹いていた。


今朝も顔なじみのサーファー達が、沖に出ている。


夕凪もその中に混ざり、プカプカ浮かんで波を待っていた。



私はいつもの特等席の船着場で、
座って夕凪を見つめる。



いい波が来た。


大きくうねる波を、夕凪は見逃さない。


すぐに動き出し、華麗に波に乗る。



今日のライディングは、思い切りがいい。


果敢に波を攻め、ボードの裏面がハッキリ見えるほどの、キレのある技を繰り出している。



波が白く砕け散り、夕凪の体が海に沈んだ。



今のは素晴らしいライディングだった。



「夕凪ーっ!
良かったよー!!」



立ち上がりそう叫ぶと、
夕凪が笑顔で手を振ってくれた。



こんな日常を取り戻せるなんて……

昨日まで泣いていた自分には、夢物語だったのに。



キラキラ波しぶきを浴びる、夕凪の笑顔が眩しかった。



波に挑む真っすぐな姿に、鼓動がトクトク速くなった。




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