涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
海から上がった夕凪と、家の前で立ち話しをしていた。
時刻は6時半。
母に怒られ、慌てて学校に行く支度を始めた。
夕凪はバイクで30分あれば着くけど、私はのろのろバスで一時間。
夕凪より早く出なければならない。
支度をしながら、
「私も原付免許とろうかな」
と呟いた。
そうすれば朝は時間に余裕ができ、夕凪と一緒に通学もできる。
ボソリ呟いた言葉を、父がしっかり聞いていた。
「やめとけ」
「どうして?」
「潮音はバランス感覚が悪いから、危ない。
四輪ならいいけど、二輪はダメ」
バランス感覚……
その言葉に、何も言えなくなる。
私が自慢できるのは水泳だけ。
それも海限定。
プールでクロールや平泳ぎなど、決まった泳ぎをしなさいと言われたら、途端に進まなくなる。